愛され、親しまれる図書館を目指して

附属図書館長 石川 友紀

附属図書館長 石川友紀 平成10年11月1日付けで附属図書館長に就任いたしました。就任して日は浅いのですが、行事や来館者も多く、研究・教育と合わせて一段と忙しくなり、気を引きしめて業務に励んでいるところです。
 幸い、金城昭夫前館長の任期中に、附属図書館の充実と強化がはかられ、新事業として実現をみたものも少なからずありますので、今後は引き続き、だれにでも利用しやすい、愛され、親しまれる図書館を目指して、図書館運営に努めていきたいと思います。
 その指針となるのが、平成10年3月に本図書館より発行されました『附属図書館の発展を目指して―現状と課題―』(自己点検評価報告書No.2)であります。本書には、本図書館の全般にわたる現状と課題が詳細に分析・考察されていますので、その提言に沿って、一歩一歩実現を期していくつもりです。
 ここで、附属図書館の今後の主要な課題を整理しておきますと、つぎの3点が挙げられます。一つは開館時間の延長であります。現状は平日の開館時間は午前8時30分から午後10時まで(平成10年4月から1時間延長)、土・日曜日の開館時間は午後1時から午後5時までであります。このうち、土・日曜日の開館時間の延長と医学部分館の無人開館装置導入による24時までの開館の実施を目指しています。
 二つ目は電子図書館的機能の充実・強化であります。これは時代の要請であり、高度情報化時代に対応するものです。そのため、本館に電子化を進める研究開発室が設置されました。また、データベースを蓄積・発信できる機器・ソフトの整備を進めていきます。
 三つ目は沖縄関係資料の収集とデータベース化であります。前記の研究開発室が中心となり、平成10年度には文部省科学研究費補助金の研究成果公開促進費によるデータベース作成事業として 「琉球語音声データベース」 を申請しましたところ、幸い採用されました。今後3年間、同データベースの整備を計画しています。平成10年度は1,196万円の予算がつき、現在『今帰仁方言辞典』及び『沖縄語辞典』のデータ入力や音声切り出し作業などを進めています。
 本館のいま一つの特色は、海外衛星放送受信システムが平成10年5月より稼動し、留学生等に喜ばれていることです。遠い異郷の地にあって勉学に励んでいる留学生にとって、母国のテレビがリアルタイムに見られることは何ものにもかえがたい心の安らぎを覚えることでしょう。海外衛星放送受信システムは、現在本館西側の6基のパラボラアンテナで受信し、3階の留学生交流コーナーに設置している6台のモニターに映し出され、世界30か国130余チャンネルの受信が可能となっています。
 ここで、世界における交通網・通信網の発達を個人的体験で述べたいと思います。いまから20年前、昭和53年(1978)に、初めて文部省の科学研究費補助金により、沖縄県出身移民一世の海外学術調査で、南米4か国(ブラジル・アルゼンチン・ペルー・ボリビア)を、同僚の島袋伸三法文学部教授と踏査しました。当時、日本円の価値は低く、アメリカ合衆国の経済圏にあった南米諸国の現地通貨は強く、支給された旅費では足りず、私費を持ち出したことを憶えています。その当時、南米を旅行する日本人観光客はほとんど見当たりませんでした。しかし、この20年間、なかでも最近の10年間では、交通・通信網の発達はすばらしく、人・物・金・情報などは一段とスピードアップし、短期間・瞬時のうちに地球を回るほどになりました。地理上絶対的距離はなんら変わることはありませんが、時間的距離は大層短くなりました。かつて沖縄県から南米諸国へ移民した一世の方々は、船を利用して約30日から50日もかかり目的地へ到着しました。郷里を離れ遠い南米への船旅は、まさに地の果てに行くようであったと一世移民は述懐しています。いまや、南米へも航空機で約20時間から30時間で、気軽に行けるようになりました。
 平成10年(1998)8月、日本移民と軌を一つにするブラジルとアルゼンチンの沖縄県出身移民90周年記念式典に参加する機会をえました。同年8月9日サンパウロ市での沖縄県人ブラジル移民90周年記念式典には400人以上、8月16日ブエノスアイレス市での沖縄県人アルゼンチン移民90周年記念式典には300人以上の関係者が県から参加し、現地の一・二・三世など1,000人以上もの沖縄県系人(ウチナーンチュ)と交流をし、式典をはさんでの祝賀諸行事は盛況を呈しました。わが琉大からも法文学部を主体に先生方や学生(エイサー隊)が各十数人、マッケンジー大学との学術交流をも兼ねて、ブラジルの同式典に参加しました。
 このように、地球の反対側に位置する南米諸国の県系移民との交流がおこなわれたことは、かつては考えられなかったことであり、精神的近接感とともに、まさに地球は狭いことを実感することになりました。
 沖縄県から一番遠いアルゼンチンは、これまで電話等の施設が古く、十分に通じない地域でありましたが、最近日本の技術も取り入れ、いまでは電話・FAXも良く届くようになりました。その結果、県の通信員も兼ねた一世移民は、インターネットにより、毎日、郷里の新聞記事に目を通し、また、ブエノスアイレス市から情報を瞬時に発信できると、そのすばらしさを喜んでいました。
 このように、通信面ではインターネットにより世界は一つになりつつあります。図書館もこれまでの図書館とは変わりつつあります。とくに利用者に対するサービス面では充実してきたと言えるでしょう。本図書館の職員はそのほとんどが司書の資格をもつ専門職員であり、今後とも利用者の要望に応えるよう待機していますので、気軽に相談し、図書館を十分に利用・活用してほしいと思います。
 

(いしかわ とものり:法文学部教授 地理学)